2016年09月20日

立軌展(孫崎)

今年から立軌会という美術団体のメンバーとして
参加させていただくことになった。

他の美術団体と比べると40名強という
圧倒的に少ないメンバーで構成されているが、
粒ぞろいである。
そんな場所に縁あって肩を並べられることは大変光栄で、
それと同時に大きなプレッシャーでもある。

すでに夏前から出品制作に取り掛かり、
しかも今年はすぐあとに個展も控えていることもあって
夏休み返上で制作。

そして先日、その搬入で東京都美術館へ行ってきたところである。
会期はまだ少し先だが、この日は図録作成用の撮影のため
全員の作品が一足先に一堂に会した。

ある程度覚悟はしていたものの、それでも
自宅の狭い部屋で一人描いている時はそれなりに見えた作品が
並べられ広い空間にポツンと置かれると、なんと頼りないことか・・・。
撮影が進み、次々と他の作品を目の当たりにすると、
もう泣きたくなってくる。

作品制作を制作するにあたって、何が一番難しいか。
それは冷静に、客観的に、自作を見つめ
指摘する「眼」を持つことだと思う。
そしてその判断する「眼」も、
自分で鍛えていかなくてはいけない。

その時は完成した、と思っていても
時間が経ってから見てみると直したくなる。
描いては反省し、描いては反省し・・・
作品制作に終わりはない。

制作者にとって完全な完成など、
この世には存在しないのかも知れない。
レオナルド・ダ・ヴィンチは、
モナリザに生涯筆を入れ続けたと伝えられている。
それは研究をすればするほど、
過去の仕事の改善点が見えてきてしまうからだろう。

作品は制作者の成長と共にあるのであれば、
今はまだ立軌会の中でも末端にいる私が、
この中で今後どれだけ自分を鍛え上げていけるかが勝負である。

今回の展示は、そんな目で見ていただけたら、
恥ずかしながら救われる。
もちろん他の作家方の素晴らしい作品も
ぜひ見ていただきたいと思う。

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第69回立軌展
10月13日(木)〜28日(金) ※17日(月)休館
9:30〜17:30(最終日〜14:30) ※入場は30分前まで 
東京都美術館 1階第1展示室
や700円 大学生500円 高校生300円 中学生以下・70歳以上無料
「ゴッホとゴーギャン展」チケット持参の方は200円引き

立軌会サイト→http://ryukikai.jp/top.html


孫崎
posted by 神田絵画教室 at 20:20| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月04日

入院(蔵野)

DSCF5754.jpg
「ブルージュにて」 F10号 キャンバス・油彩

先日、入院することになった。
数ヶ月前から腹部に鈍痛があり、念のため診てもらおうと思い、病院に行ったら、即日入院することになってしまった。
病名は「急性虫垂炎」、8日間の入院になった。

入院した初日は、絵の締め切りのことを考えて、焦るばかりだった。
病室で油絵を描くわけにはいかない。
治療中は一切の飲み物・食べ物が摂取できず、点滴で身動きもとりにくいため、ベッドで横になって時間が過ぎるのを待っていた。

友達や家族がお見舞いに来てくれた。
漫画や小説など、たくさん差し入れしてくれた。

差し入れてくれた漫画の中に「ジョジョの奇妙な冒険」があった。
中学生の頃読んでいた週刊誌で連載していたのを知っていたが、当時は難解な感じがして、ほとんど読んでいなかった。
改めて読んでみると、まず絵の描き込みが凄いことに気がついた。
話しも面白く、展開が気になり、あっという間に三冊読んでしまった。

映画のDVDを家族に頼み、借りてきてもらった。
最近は時間に余裕がなく、映画もずっと観ていなかった。
「明日に向かって撃て」という映画がとても良かった。
ラストシーンの余韻がずっと心に残った。

今回の入院は、家事や締め切りに追われることもなく、かけがえのない贅沢な時間だったと思う。

結局、映画も本も読み切れないまま、退院となった。

いまは元気にしています。


蔵野
posted by 神田絵画教室 at 15:20| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月02日

火箸風鈴(柳田)

明珍火箸 「みょうちんひばし」と読む。

夏が苦手である。夏の暑さは得意ではない。
が、夏の風物詩である風鈴が昔からなんとなく好きだった。
中学の修学旅行で行った岩手で購入した南部鉄の風鈴を我が家ではずっと愛用してきた。見た目の涼やかな江戸風鈴のガラスの容姿も魅力的だが、南部鉄の澄んだ音色が、茹だるような暑さをふと癒してくれる気がして、夏になると風の通り道にぶら下げている。

さて、明珍火箸である。
明珍家は兵庫県姫路の元々は平安時代から続く甲冑師の家で、明治維新後はそれまで余技だった茶室用の火箸の製作に転じたらしい。現在はその火箸を4本ぶら下げた火箸風鈴を製作し、姫路の伝統工芸品となっている。
何年も前にテレビでこの火箸風鈴が紹介され、テレビ越しにだがその音に魅了された。
私の祖母の実家が姫路で、趣味人だった曾祖父がまだ風鈴としての火箸が製作されていない頃から、明珍火箸を吊り下げて音色を楽しんでいたらしい、と火箸に興味津々な私を見て母が教えてくれた。益々興味が湧いた。

そして数年前に関西方面に行った折に、思い切って姫路まで足を伸ばし妙珍本舗に赴いた。
小さな工房であった。まだスマートフォンなど持っていない頃に道に迷いつつ訊ねていった。まるで何年も片恋をしている相手に会いに行く、と言ったらさすがに大袈裟だが、恋少なき私にとってはそれに近い心持ちであった。
明珍火箸は鉄を打って作られている。その火箸の風鈴の音色は実際に聞くと思っていたより低音なように聞こえたが、機械越しの音声ではわからない音の幅があり余韻がある。たぶん以前にテレビで聴いたのは玉鋼を使用した稀少なもので、ちょっと私の懐では手の出ないものだった(片恋はまだ続くらしい)が、いくつかある火箸の中から音色を聞いて気に入ったものを一つ購入してきた。

打ち込まれた鉄の音色は澄んでいて、不思議な余韻がある。南部鉄の風鈴ともまた趣のことなる音色で、中央にぶら下がる舌(ぜつ)が微かに触れるだけで涼やかな音を奏でるのが、微風を感じられて心地好い。
本来、冬の道具である火箸を夏の涼を得るものとして使うというのも何だか面白い。

涼しく過ごすには冷房をつけるに越したことはないのだが、「涼を得る」という言葉にはこんな些細なことが合うんじゃないかと、暑さでグダグダしながら考える。今年もまだ暑さは続きそうなので、もう少し火箸にわずかな涼を求める日が続くようだ。


柳田
posted by 神田絵画教室 at 18:30| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする